Introduction

イントロダクション

豊洲の新たなシンボルとなる、
“アーバンリゾートホテル”の
立ち上げに挑む。

2019年、当社は、「Tokyo Floating Journey 空に突き抜ける東京の旅」をデザインコンセプトに掲げ、ららぽーと豊洲・豊洲駅直結のアーバンリゾートを実現する新たなホテルの開業プロジェクトをスタート。グループホテルの中で最も眺望を堪能できる高層フロアのホテルの魅力をお客さまに伝え、滞在を楽しんでいただけるよう、いかに開業し運営へと展開していくか。幾多の困難を乗り越えて、「三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロス」をつくりあげたプロジェクトメンバーの奮闘の日々を追った。

Project Members

プロジェクト担当者

宇賀 肇

総支配人
(プロジェクト当時マネージャー)

宇賀 肇

2003年入社

宮川 雄太

フロント

宮川 雄太

2009年入社

川崎 満帆

フロント

川崎 満帆

2016年入社

三井不動産グループが街づくりをしている豊洲エリア。
その豊洲を代表するホテルを。期待に胸躍らせて。

宇賀は豊洲開業準備室への異動の辞令を受けた当初、“豊洲”の地名に戸惑った。「豊洲に全く馴染みがなくて、正直ピンときませんでした(苦笑)。しかし地図を調べ、あわせてプロジェクトの提案書を見てみると胸が高鳴ってきて……。三井不動産グループが街づくりをしている地域であり、その大規模複合ビルの最上階に位置し、低層階には三井不動産グループの商業施設・ららぽーとが入居するなど、今までにない三井ガーデンホテルだなと感じたし、海や運河が近く、レジャー要素が強いホテルになりそうだなと。これは豊洲を代表するホテルになり得るし、当ホテルができることをきっかけに、さらに豊洲の知名度が上がればいいなとも感じました」
一方、宮川は、自分の地元の豊洲に誕生するホテルに携われることに喜びを感じていた。「小学生まで豊洲に住み、両親は今も豊洲で生活しているため土地勘があります。そこにこんなに素晴らしいホテルができるのが何よりも嬉しかったですね。また、資料を見ただけでも、会社としてかなり力を入れている物件であることが伝わってきました」
2019年10月に豊洲開業準備室に異動した宇賀と宮川が最初に取り組んだことの一つ。それは自転車での周辺散策だった。「地元をよく知る私が、土地勘のない宇賀さんに周辺を案内するという感じで始めて。どんどん範囲が広がって、レインボーブリッジを渡って芝浦へ、最終的には門前仲町まで足を伸ばしました」。宮川主導の周辺散策は宇賀にさまざまな発見をもたらした。「天気の良い日は、ホテルのほど近くの川辺にある、ぐるり公園を散策するのが気持ちいいんです。都心でありながらふんだんに自然を感じることができるエリアだということが実感できて、この段階で豊洲が大好きになりました」

最大の魅力である「眺望」を
いかにホテルづくりに落とし込んでいくか。

周辺散策とともに、開業準備にあたって宇賀がまず着手したのはプロジェクト自体を把握することだった。「当ホテルの最大の魅力は、36階、高さ約170メートルから望む眺望です。図面を確認するとフロアがロの字型になっていて、客室によって見える景色が違います。そこで館内をフロア図面で把握しながら、どのような景色が見えるのか想像しながら、宣伝・告知、客室販売、運営オペレーション等をどう展開にしていくかを考えていきました」
宇賀が描いた構想のもと、宮川は旅行代理店との契約やネット予約の販売環境構築、さらにはホームページの作成に取り組んだ。「開業準備に関わるのは初めてだったため、初体験の業務ばかり。宇賀さんからアドバイスをもらったり、本社の専門部署の担当者と連携するなどして日々勉強しながら進めました。ホームページに関しては、この部屋タイプならお客さまにこういう風に紹介しようか、などと考えながら、協力会社の方と打ち合わせを重ねました」
宇賀にとってもう一つの重要な取り組みは、周辺施設との連携の模索だ。「ららぽーと、キッザニア東京、スポーツプラザ、オフィスなど、周りにどういう施設があるかを把握し、どの施設とどんな連携をするかを模索しました。例えばキッザニア東京と連携して、キッザニア東京の入場券付き宿泊プランを展開したのはその成果の一つです」

想定外の事態が起こるなか、
知恵と工夫でマイナスをプラスに。

想定外の事態が訪れたのは、2020年に入りコロナ禍が広がりを見せ始めた頃のこと。「当初はインバウンドが60%という想定でしたが、今後インバウンドの取込が難しくなることが目に見えていて。本当に開業できるのだろうかという危機感すら抱いていました」
宇賀はそんな思いを抱えながらも、“今”できることをしっかりやっていこうと気持ちを引き締め直した。「大きな転換は、インバウンドから国内レジャーのお客さまへシフトしたこと。大規模複合ビルは着々と出来上がりつつあり、ホテルの眺望の素晴らしさは確約されています。この眺望をいかに国内レジャーのお客さまに伝えていくかが、以降の重要なテーマになりました」
そこで考え出したのが、予約段階やご滞在中に各部屋の眺望がわかるようなコンテンツを、ホームページと客室のテレビ(VOD)に掲載することだった。「予約時にホームページで眺望を確認して部屋を選んでもらうのはもちろん、ご滞在中のお客さまに『次はどの部屋に泊まってみようかな』と想像を膨らませていただけたらというのが発想の出発点でした。実は元々は客室に眺望ブックを置く予定でしたが、コロナ禍の中、客室に置く物を極力減らす必要があり、ならばテレビに画像として載せようということに。コロナ禍があったからこそ、こういう新しい仕組みが導入できたとも言えます」
プロジェクトの修正を余儀なくされるなか、2020年2月に開業準備室に異動した川崎が担ったのは、新人スタッフの研修。上司が作成した指導内容やスケジュールに即して指導を進めた。「ホテル業務未経験で、かつそれぞれが理解度も異なる新人スタッフにどう教えていけば、みんなのレベルを上げていけるか。試行錯誤しながら指導する日々は苦労の連続でした」
そんな中、さらなる試練がプロジェクトを襲う。4月に緊急事態宣言が発令され、研修をストップせざるを得なくなったのだ。

開業までわずか1ヶ月。
それぞれが自らの仕事に邁進。

緊急事態宣言を経て、新人スタッフを含めプロジェクトメンバー全員が集合できたのは7月1日のこと。この段階で、二転三転していた開業日は8月10日に決定した。開業までの期間はわずか約1ヶ月。研修を担当する川崎は苦慮していた。「コロナ禍でなければ、開業前に新人スタッフは当社運営の他のホテルで現場研修をして戻ってくるので、お客さま応対のイメージが湧きやすいんです。しかし、その機会も得られないままだったため、新人スタッフはお客さまが目の前にいることの想像がつかないし、動き方もわからない状態でした」
そこで川崎は座学よりも実践を重視。その中でスタッフが理解し自ら落とし込めるよう理由や背景説明に力を入れ、また、ロールプレイングの録音や撮影を実施し、自身で現状を把握して取り組んでもらえるよう意識づけを促した。
一方、宮川が開業準備を粛々と継続する中、宇賀は開業日が8月10日になったことを、旅行代理店をはじめ、さまざまな関係者に伝える作業に追われていた。「当然いろいろ心配されましたが、『素晴らしいホテルができています、大丈夫です』と自信を持って答えました(笑)」
密になるリスクがあるため関係者を広く招待する内覧会も実施できなかったが、その代わり、プロジェクトに関わる大切なお客さま等を個別にアテンドして、宇賀自らがホテル館内を案内して説明する機会を設けた。「一人ひとりのお客さまに対して丁寧にご案内できた結果、当ホテルに親近感を持ってもらえたと思います」

予想を上回る数のお客さまを迎えた開業日。
その期待に応える体制づくりを。

そして8月10日。宮川はようやく開業の日を迎えられたことに喜びを感じていた。「ありがたいことに多くのお客さまにご予約いただいて、非常に忙しくて感慨に浸る間はあまりなく(苦笑)。必死に1日を乗り切ったという感じでした」
川崎もまた必死だった。「夜勤のインチャージ(時間帯責任者)として、スタッフみんなの質問に答え、かつ、目の前で鳴る電話やお客さまの応対をして。スタッフ一人ひとりが研修の成果をどう発揮しているか把握するのも大変でした」
宇賀は、コロナ禍の中で万全の準備ができていない状況での開業で、予約は頂いているもののお客さまが本当にお越しいただけるのか、不安を募らせていた。「開業準備室スタート時は期待8割、不安2割だったのが、この日は不安が8割でした」。その不安は的中する。予想をはるかに上回るお客さまが、チェックインの15時を目がけて訪れたのだ。「本当に驚きました。豊洲周辺にお住いの方々が、最上階にホテルのあるビルが建っていく過程を見ていて楽しみに待っていたようで、開業日にお越しになったんです」
なんとしてもお客さまの期待に応えたい。宇賀はそう思った。

お客さまの大切な1日に選んでもらえる、
そんなホテルであり続けたい。

2020年8月に開業以降、コロナ禍が続く中、『三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロス』の稼働が大きく落ち込むことはなく、その評価も順調に高まっている。「狙い通り、眺望の良さでのコメントが圧倒的に多く、違った眺望を求めてリピートしていただけています。また、記念日のお客さまも想定通り多く、『良い記念日になった』等のコメントも多数見受けられます」と宇賀が語れば、宮川は「豊洲を代表するホテルになりたいと考えていましたが、すでにそうなれていると私は思っています」と力強く断言する。川崎はさらに重ねる。「最近流行っているホカンス(ホテルに泊まることをバカンスとする滞在スタイルのこと)需要にピッタリはまったと思います。外に遊びに行けない分、客室で眺望を楽しみながらくつろげるし、インスタ映えスポットもたくさんあります」
インバウンドから国内レジャーへとシフトしていく中で、図らずも顧客層の幅広いホテルになった。「今後もたくさんのゲストに当ホテルを利用いただいて、とにかく滞在を楽しんでもらうのは同じ。その中でもレジャーのお客さまが多いことが想定されますので、より楽しんでもらえる素材をつくり、かつ今あるサービスをブラッシュアップしていきたいと思っています」
お客さまの大切な1日に選んでもらえるホテルであり続けたい。それが3人の共通する想いだ。